― 「登録した=承認された」ではない、FDA制度の落とし穴 ―
アメリカに医薬品、食品、化粧品、医療機器などを輸出する企業にとって、避けて通れない手続きが FDA Facility Registration(施設登録)。
しかし、この言葉を正確に理解している人は意外と少ないのです。
「FDAに登録したから、もう販売していい」
「登録した=FDAが承認した」
…もしそう思っているなら、要注意。
その認識は 非常に危険な誤解 です。
🧭1. Facility Registrationとは何か?
Facility Registration(施設登録) は、
あなたの会社が どこで製造・加工・包装・保管を行っているのかをFDAに報告する制度 のこと。
FDAが、アメリカ市場に流通する製品を監視・追跡できるようにするための “登録台帳” のようなものです。
つまりこれは、「自己申告型の届出」 であり、FDAがその工場を承認(Approval)したという意味ではありません。
📦2. 登録が必要な業種と対象
業界ごとに対象が異なりますが、代表的なものは以下の通りです👇
| 業界 | 登録対象施設 | 備考 |
|---|---|---|
| 医薬品(Drugs) | 製造所、包装所、試験所 | 毎年更新が必要(毎年12月にリニューアル) |
| 医療機器(Devices) | 製造・輸入・再包装施設など | Device Listing(製品リスティング)も併せて必要 |
| 食品(Foods) | 食品を製造・加工・包装・保管する施設 | 海外施設は米国代理人(U.S. Agent)が必須 |
| 化粧品(Cosmetics) | 自主登録制度(2023年MoCRA法で義務化へ) | FDAが立ち入り検査を行うこともある |
⚖️3. 「登録」と「承認」はまったく違う
ここが最も重要なポイント。
✅ 登録(Registration):
「この施設はFDAが把握している」という状態。❌ 承認(Approval):
「FDAが科学的・法的に審査し、適合と判断した」状態。
つまり、Facility Registrationはあくまで “存在の届出” にすぎません。
登録してもFDAが品質を保証するわけではなく、違反製品を製造していれば当然取り締まりの対象になります。
🕒4. 登録の更新を忘れるとどうなる?
FDA登録は一度きりではありません。
多くの分野で 毎年更新(Annual Renewal) が求められます。
たとえば医薬品施設の場合:
- 更新期間:毎年10月〜12月
- 期限までに更新しないと、翌年1月1日以降は「登録失効(Expired)」扱い
- 登録番号が無効になると、輸出も通関もできなくなる
つまり、更新忘れ=輸出停止 という非常に大きなリスクを伴います。
🌍5. 海外企業に必須の「U.S. Agent」とは?
米国外の施設が登録する場合、U.S. Agent(米国代理人)の指定が義務付けられています。
この代理人は、FDAと施設の間の連絡窓口(official correspondent)として機能します。
FDAからの緊急連絡や書面はすべてU.S. Agentを経由して送られるため、
信頼できるパートナーを選ばないと、重要な通知を見落とすリスクがあります。
🚨6. よくある誤解とその危険性
| 誤解 | 実際の意味 | リスク |
|---|---|---|
| 「登録した=販売できる」 | 登録は届出。販売には別途承認・通知が必要。 | 違法販売とみなされる可能性 |
| 「FDAが工場を承認してくれた」 | 登録は承認ではない。FDAは内容を審査しない。 | 品質トラブル時に「虚偽表示」とされるリスク |
| 「更新しなくても問題ない」 | 期限を過ぎると登録失効。 | 輸出・通関がストップ |
💡7. 登録の本当の意味 ― 「監視対象になる」ということ
Facility Registrationは、FDAがあなたの施設を監視対象として登録する行為です。
これによりFDAは、製品のリコールや査察の際に迅速に連絡を取れるようになります。
つまり、登録とは「販売許可証」ではなく、“FDAレーダーに映る存在になる”こと。
正確な情報を登録することが、信頼と安全の第一歩です。
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