~トラブル回避のカギはB/Lの選び方にあった~
貿易に関わる方なら、一度は目にしたことがあるであろう「B/L(Bill of Lading/船荷証券)」。
この書類は、単なる運送状ではありません。貨物の権利そのものともいえるほど、重要な役割を担っています。
でも、実はこのB/L、複数の種類があるってご存知ですか?
目的や取引条件によって正しく使い分けなければ、思わぬトラブルに巻き込まれるリスクも。
今回は、「B/Lの基本」と「主な種類・違い」について、わかりやすく整理して解説します。
🧾 B/L(船荷証券)とは?
まずは基本から。
B/Lとは、海上輸送において貨物を引き渡す際に発行される輸送契約の証明書であり、
同時に以下3つの機能を兼ね備えた超重要書類です:
- 貨物の受取証(船会社が貨物を受け取ったことを証明)
- 運送契約書(港から港への輸送契約)
- 貨物の所有権証明書(B/Lを持つ者=貨物の所有者)
つまり、B/Lがないと貨物を引き取れないという状況が発生し得ます。
📂 主なB/Lの種類とその違い
① オリジナルB/L(Original B/L)
特徴
- 複写式で通常3通発行
- 引き取りには少なくとも1通の原本が必要
メリット・デメリット
✅ セキュリティが高く、支払い条件(L/C決済など)に適している
⚠️ 原本の到着が遅れると、貨物が港で止まり、滞船料(デマレージ)が発生することも
② サレンダーB/L(Surrendered B/L)
特徴
- 発行後すぐに「サレンダー(元本放棄)」される
- 受取人は原本なしで貨物を引き取れる
メリット・デメリット
✅ スピーディな貨物受け取りが可能(主に信用取引)
⚠️ 所有権が明確に移るため、信用関係が前提
💡信頼関係のあるリピーター同士や、越境ECでよく使われる形式
③ シーウェイビル(Sea Waybill)
特徴
- 単なる輸送指図書(貨物所有権の証明機能はなし)
- 船会社が指定された相手に貨物を引き渡す
メリット・デメリット
✅ 迅速・安全・ペーパーレス(電送対応も可能)
⚠️ 貨物の所有権譲渡には不向き
💡インコタームズがFOBやCFRなど、船積条件がシンプルな場合によく使われる
④ トゥーオーダーB/L(To Order B/L)
特徴
- 受取人欄が「To Order」となっているB/L
- 裏書譲渡(エンドースメント)で第三者へ所有権を移せる
メリット・デメリット
✅ 信用状(L/C)決済と相性が良い
✅ 転売・流通に適している
⚠️ 裏書を正しくしないと所有権移転が無効に
🧭 どう使い分ければいいの?
目的 | おすすめのB/Lタイプ |
---|---|
信用状(L/C)取引 | オリジナルB/L、To Order B/L |
リピーターとの迅速取引 | サレンダーB/L、Sea Waybill |
貨物を転売・流通させる場合 | To Order B/L |
トラブル回避を優先したい | オリジナルB/L(ただし慎重に) |
⚠️ 実務で気をつけたい落とし穴
- インボイス・パッキングリストとの整合性が取れていないと通関で止まる
- 貨物先渡し・支払い遅延と絡むと、B/Lが「人質化」して関係悪化する
- 輸入国によっては、オリジナルB/Lが義務化されている場合も
📝 まとめ:B/Lは単なる書類ではなく「貨物の鍵」
輸出入取引では、正しいB/Lの選択と管理がトラブル回避の第一歩です。
特に新興国との取引や、越境ECが加速する今こそ、
「スピード」「安全」「信用」のバランスを取ったB/L運用が求められます。