グローバル市場がボーダーレスに進化する中、越境EC(Cross-border E-Commerce)は日本企業にとって大きな成長機会となっています。しかし、単に「海外に商品を売る」だけでは成果を上げるのは難しく、異なる文化や消費行動を持つ顧客の購買プロセスを深く理解する必要があります。
そのカギとなるのが「カスタマージャーニーの理解と応用」です。本記事では、越境ECにおけるカスタマージャーニーの考え方と、それを戦略に落とし込むための実践的アプローチを紹介します。
カスタマージャーニーとは?
カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを認知してから購入、リピートに至るまでの一連のプロセスを指します。たとえば、
- 認知(Awareness):広告やSNS、検索などで商品を知る
- 興味・検討(Consideration):レビューを読む、比較する
- 購入(Purchase):実際に商品を購入
- 利用・評価(Retention):使ってみて評価する
- 推奨(Advocacy):SNSで共有、他人に勧める
越境ECでは、これらすべてのステージで「文化的背景や購買習慣の違い」を考慮した施策が求められます。
越境ECにおけるカスタマージャーニーの特徴
1. 認知のチャネルが異なる
例えば中国では百度(Baidu)検索やWeChat広告が主流ですが、アメリカではGoogleやInstagramが中心です。ターゲット国ごとに「使われているプラットフォーム」が異なります。
👉 対策:ターゲット市場ごとに最適な広告チャネルを設定。SNS運用も現地言語で行う。
2. 信頼構築のプロセスがより重要
海外ブランドに対しては「本当に届くのか?」「返品はできるのか?」という不安が大きいため、レビュー、認証マーク、配送・返品ポリシーの明示がカギを握ります。
👉 対策:第三者レビューやユーザーの投稿を活用し、信頼性を可視化。
3. 購入決定までに時間がかかる
日本よりも「比較・検討」段階が長い傾向があり、カート離脱も多くなります。
👉 対策:リターゲティング広告やメールマーケティングで離脱顧客を再アプローチ。
4. アフターサービスも国によって期待値が違う
日本では「丁寧で迅速な対応」が求められますが、欧米では「即時解決・自動対応」が好まれることもあります。
👉 対策:国ごとに異なるカスタマーサポート体制を構築(例:チャットボット vs. メール中心)
カスタマージャーニーを越境EC戦略にどう活かすか?
以下のような形で活用することができます。
ステージ | 課題 | 対応策 |
---|---|---|
認知 | 広告が届かない | 現地SNSインフルエンサー活用 |
興味・検討 | 言語・文化の壁 | 現地語LP、文化に即したコピーライティング |
購入 | 決済方法の違い | 現地通貨・決済手段の導入(例:Alipay、PayPal) |
評価・利用 | 配送トラブル | 現地配送パートナーの選定、トラッキング強化 |
推奨 | SNSで拡散されない | ハッシュタグキャンペーンや口コミ特典制度の導入 |
成功企業の事例:MUJI(無印良品)
無印良品は、中国市場での越境EC展開において、以下のようなジャーニー戦略を導入しています。
- WeChatミニプログラムでの商品紹介(認知〜購入)
- 現地スタッフによるライブコマース(検討〜購入)
- 購入者レビューの翻訳・共有(信頼性向上)
- ローカル倉庫による迅速配送(満足度向上)
まとめ
越境ECにおいては、「何を売るか」よりも「どう売るか」がより重要です。カスタマージャーニーを理解し、国・文化ごとの消費者心理や行動パターンに基づいた設計をすることで、売上は大きく変わります。
これから越境ECに挑戦する企業も、すでに展開中の企業も、「自社のカスタマージャーニー」を一度棚卸ししてみてはいかがでしょうか?