アメリカへ食品やサプリメント、化粧品などを輸出している企業にとって、
避けて通れないのが「FDAインスペクション(査察)」です。
「うちにもいつ来るのだろう?」
「何を準備しておけばいいのか分からない…」
そんな不安を抱える担当者は少なくありません。
今回は、FDA査察の基本と、実際に役立つ対策・準備のポイントをわかりやすく解説します。
🧭 FDAインスペクションとは?
FDA(Food and Drug Administration:米国食品医薬品局)は、
アメリカ国内外の食品・医薬品・化粧品・医療機器の安全性を監督する機関です。
FDAインスペクションとは、そのFDAが行う製造施設・輸出業者などへの査察のこと。
目的は、企業がFDAの規制(例:cGMP = Current Good Manufacturing Practice)に
適切に従っているかを確認することです。
🏭 査察の対象になる企業
FDAの査察対象は、以下のような事業者です。
- アメリカへ食品・サプリメントを輸出している製造業者
- FDA施設登録(FDA Establishment Registration)をしている工場
- アメリカ市場向けのOEMメーカーや原材料供給業者
特に、過去に違反歴がある企業やリスクの高い製品を扱う施設は、優先的に査察対象になる傾向があります。
📅 査察の種類
FDA査察には大きく分けて3つのタイプがあります。
| 査察の種類 | 内容 | 予告の有無 |
|---|---|---|
| Routine Inspection(定期査察) | 定期的に行われる通常査察 | 通常は事前通知あり |
| For Cause Inspection(原因調査査察) | 苦情や事故報告など、特定の問題に対して行われる査察 | 多くの場合予告なし |
| Follow-up Inspection(フォローアップ査察) | 過去の違反是正後の確認 | 事前通知あり/なし両方あり |
つまり、いつFDAから連絡が来ても慌てないように、
常に査察対応の準備を整えておくことが重要なのです。
🧾 査察の流れ
FDA査察の一般的な流れは以下のようになります。
- 事前通知(Notice of Inspection)または突然の訪問
- Form 482(査察開始通知書)の提示
- 施設の見学・製造ラインの確認
- 品質管理・記録書類の確認(SOP・ロット記録など)
- 担当者へのインタビュー・質問
- Form 483(指摘事項リスト)の交付
- 是正報告書(CAPA)の提出
査察の結果、問題がなければ「No Action Indicated(NAI)」、
軽微な指摘があれば「Voluntary Action Indicated(VAI)」、
重大な違反がある場合は「Official Action Indicated(OAI)」と分類されます。
⚠️ 指摘されやすいポイント
FDA査察でよく指摘されるのは、以下のような点です。
- 文書管理の不備(記録漏れ、更新遅れ)
- 衛生管理・異物混入防止体制の不十分さ
- 教育・訓練記録の欠落
- トレーサビリティ(追跡性)の欠如
- 原材料の受入検査・サプライヤー管理不足
「書いてあるけど運用されていない」ケースも非常に多く、
“記録と実態の整合性”が重視されます。
🧰 査察対策の5つの準備ポイント
① SOP(標準作業手順書)の整備
製造・清掃・検査・出荷など、全ての工程についてSOPを最新版に更新しておく。
英語版も併せて準備するとスムーズです。
② 記録書類の即時提示
FDA査察官は突然「このロットの製造記録を見せてください」と求めます。
書類がすぐに出せる体制を整えておきましょう。
③ 社内教育・モック査察の実施
現場スタッフが突然質問されても答えられるよう、模擬査察(Mock Audit)を定期的に行うのがおすすめ。
「誰が、何を、どのように答えるか」をあらかじめ決めておきます。
④ 是正措置(CAPA)の準備
過去のトラブルやクレーム対応について、原因分析と再発防止策を文書化しておく。
FDAは「問題を起こさない組織」ではなく、「問題を改善できる組織」を評価します。
⑤ コミュニケーション体制の明確化
査察時には、誰がFDA対応の窓口になるかを事前に決めておくことが重要です。
全員が勝手に対応すると、情報の食い違いが起こりやすくなります。
🗂️ 査察後の対応
査察が終わると、Form 483(指摘事項)が交付されることがあります。
指摘を受けた場合は、15営業日以内に是正報告書(CAPA)を提出するのが原則です。
このとき、ただ「改善しました」と書くのではなく、
- 何が問題だったのか(Root Cause)
- どう改善したのか(Corrective Action)
- 再発防止策(Preventive Action)
を明確に記載することがポイントです。
🌍 まとめ:FDA査察は“怖い”ものではない
FDA査察は、「企業の信頼性」を示すチャンスでもあります。
きちんと準備し、透明性のある運営をしていれば、むしろ米国ビジネスの信用向上につながります。
査察は突然やってくるが、準備はいつでもできる。
この姿勢が、海外展開成功の鍵になるのです。
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