― 知っているようで知らない「アメリカ医薬品規制」のこと ―
アメリカの医薬品や医療機器、食品、化粧品などの承認・規制を担う FDA(Food and Drug Administration:米国食品医薬品局)。
製薬・医療業界に携わる人なら避けて通れない存在ですが、実は「なんとなく聞いたことはあるけれど、正確な意味を誤解している」用語がたくさんあります。
今日はそんな 誤解されやすいFDA関連用語 を、わかりやすく整理してみましょう。
🧩1. “Approval(承認)” と “Clearance(認可)” の違い
多くの人が混同するのがこの2つ。
どちらも「FDAがOKを出した」と訳されがちですが、法的な重みがまったく違います。
- Approval(承認):
新薬(NDA)や一部の医療機器(PMAなど)に対して行われる、最も厳格な審査を経た「正式承認」。
→「安全性・有効性の科学的根拠が十分」とFDAが判断したもの。 - Clearance(認可):
主に医療機器の「510(k)制度」で用いられる。
→「既に承認済みの類似製品(predicate)と実質的に同等」と判断された場合に与えられるもの。
つまり、Approvalは新規性を、Clearanceは類似性を基準にしているのです。
📄2. “IND” と “IDE” ― 開発の入口での混乱
治験を始めるためにはFDAへの申請が必要ですが、その申請書の種類を間違える人も多いです。
- IND(Investigational New Drug Application):
医薬品やバイオ製剤の臨床試験を開始するための申請。
動物試験データや製造情報などをFDAに提出し、「ヒトに投与してもよい」と判断される必要があります。 - IDE(Investigational Device Exemption):
医療機器の臨床試験を行うための申請。
「まだ承認されていない医療機器を、臨床研究目的で使用する」ための特例です。
薬ならIND、機器ならIDE ― 覚えておくと混乱しません。
🧪3. “Label” と “Labeling” の微妙な差
「ラベル=包装に貼るシールでしょ?」と思っていませんか?
FDAでは、もっと広い意味を持ちます。
- Label(ラベル):
実際の製品容器や包装に印刷・貼付された情報。 - Labeling(ラベリング):
製品に付随して提供されるすべての情報(添付文書、パンフレット、ウェブ情報など)を含みます。
つまり、ウェブサイトに書いた使用上の注意までが「Labeling」に含まれ、誤った宣伝は違反(misbranding)となる可能性があります。
⚖️4. “cGMP” ― 「最新」ではなく「常に適正」
“current Good Manufacturing Practice(現行適正製造基準)” の略。
ここでの “current(現行の)” は「最新技術を使え」という意味ではなく、現在一般的に認められている水準を維持せよということ。
つまり、「昔の基準で十分」ではダメ。常に最新のベストプラクティスを取り入れている状態が求められるのです。
💬5. “Advisory Committee” は「承認を決める会」ではない
FDAのアドバイザリー委員会はしばしばニュースで取り上げられますが、
彼らは「最終決定者」ではありません。
専門家が「推奨」や「意見」を述べる場であり、最終判断を下すのはFDA本体。
とはいえ、その意見が大きな影響を与えるのは確かです。
🧭6. “Breakthrough Therapy” は「即承認」ではない
“Breakthrough Therapy Designation” は革新的な治療薬に与えられる称号。
ただし、承認されたわけではなく、審査を早める支援を受けられるだけ。
ニュースで「FDAがブレイクスルー指定!」と聞くと「もう使えるの?」と思いがちですが、
実際にはまだ治験中であることがほとんどです。
🧠まとめ:用語の正確な理解が、規制対応の第一歩
FDAの世界では、一語一句に法的な意味があり、「なんとなくの理解」が大きな誤解を生みます。
今回紹介した用語は氷山の一角。
しかし、言葉の使い方を正確に押さえることで、規制文書の読み方も、FDAとのコミュニケーションも格段にスムーズになります
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