〜その部品、実はミサイルに使えるかもしれない〜
「うちは家電メーカーだから武器なんて関係ない」
そう思っていた技術が、ある日突然、輸出規制の対象になることがあります。
それが、「デュアルユース(軍民両用)技術」の怖さです。
本記事では、デュアルユースとは何か、どのような製品・技術が対象になるのか、
そして企業がとるべき対策について、わかりやすく解説します。
🧭 デュアルユースとは?
デュアルユース(Dual-Use)技術とは、
「民生用にも軍事用にも転用できる技術や物資」のこと。
例えば:
- 通信機器 → ミサイルの制御に使用可能
- 炭素繊維 → 戦闘機の機体に使用可能
- 半導体製造装置 → 軍事用ICチップの生産に使用可能
つまり、「平和利用」されるつもりだった技術が、兵器開発に悪用されるリスクがあるということです。
📜 主な規制の枠組み(日本・世界共通)
デュアルユース技術は、国際的な枠組みと国内法によって厳しく管理されています。
✅ 国際的な輸出管理レジーム(例):
名称 | 対象 | 加盟国 |
---|---|---|
ワッセナー・アレンジメント(WA) | 通常兵器・デュアルユース品 | 日本・米・EU等 |
ミサイル技術管理レジーム(MTCR) | ミサイル関連技術 | 日・米・仏・独など |
核供給国グループ(NSG) | 原子力技術 | 日・米・中・仏など |
✅ 日本国内法:
- 外国為替及び外国貿易法(外為法)
→ 特定の貨物・技術は「キャッチオール規制」で包括的に規制
→ 輸出には経産省の許可が必要になる場合あり
🎯 デュアルユース品の具体例(業種別)
業界 | デュアルユースの例 | 軍事転用の可能性 |
---|---|---|
エレクトロニクス | FPGA, 高性能IC | 誘導兵器、ドローン制御 |
化学 | 炭素繊維、高性能プラスチック | ミサイル機体、戦闘服素材 |
通信・IT | 暗号ソフト、無線通信機器 | サイバー攻撃、電子戦 |
工作機械 | 超精密加工機 | 核兵器部品の製造 |
半導体製造装置 | エッチング装置、検査装置 | 軍事用ICの製造 |
⚠️ なぜ気をつけるべきか?(リスク事例)
📌 事例1:某日本企業が中東に通信機器を輸出 → 軍事利用される懸念
→ 経産省が調査に乗り出し、一時的な輸出停止
📌 事例2:半導体製造装置の米国輸出 → 米国輸出管理法(EAR)違反で制裁
→ 多額の罰金+信用失墜
こうした違反は「意図しなくても」罰則対象になります。
🧰 企業が取るべき実務対策
1. 製品・技術の「該非判定」を行う
→ 自社製品がリスト規制やキャッチオール対象に該当するかを確認
→ 必要に応じて「該非判定書」を作成し、経産省に届け出
2. 顧客・用途の「エンドユーザー確認」
→ 輸出先の会社や最終使用者が軍事関連企業でないかを調査
→ 用途が軍事・大量破壊兵器関連でないかも重要
3. 社内の輸出管理体制整備
→ 社内に「輸出管理責任者」を置き、ルール・教育・監査を実施
→ SAPなどのERPと連携し、輸出前にアラートを出すシステム構築も推奨
✍️ まとめ:技術を守るのは企業の責任
技術がある国は、武器を作ることもできてしまう。
だからこそ、輸出管理は技術立国である日本にとって「国際的な信頼」の根幹です。
デュアルユースの視点を持ち、輸出管理を単なる手続きではなく
「未来への投資」として捉えることが、企業の持続的成長のカギになります。