なぜうちの貨物だけ?
「他の貨物はスムーズに通関できたのに、うちのだけ検査に回された…」
輸入業務をしていると、そんな経験は一度や二度ではないかもしれません。
実は、税関が貨物に「検査指定」をする理由には、明確なルールと“ちょっとした事情”があります。今回は、その仕組みと背景をわかりやすく解説します。
■ 検査指定とは何か?
検査指定とは、税関が輸入申告された貨物について、必要に応じて「中身を実際に確認する」と判断すること。これには以下の2種類があります:
- 書類検査(書類のみ確認)
- 現物検査(実際に貨物を開梱して確認)
検査が入ると、通関が1日〜数日遅れることもあり、スケジュールやコストに影響を及ぼすこともあります。
■ なぜ検査指定されるのか?その主な理由
以下は、検査対象となる代表的なケースです:
① HSコードや品目の不一致リスク
過去に同じ貨物で申告ミスが多い場合や、似た品目で関税率が大きく異なる場合は、税関側が「要注意」と判断することがあります。
② 不自然な価格や数量
市場価格と大きく乖離するようなインボイス価格や、同梱明細と数量が一致しない場合など、「ダンピング・過少申告」の疑いがある場合に指定されることがあります。
③ 禁止・規制対象品目の可能性
医薬品・食品・玩具・電気製品など、安全基準や規制が厳しいカテゴリは、ランダムに検査されることが多くあります。PSEマークや食品表示などが対象。
④ ランダムチェック(抜き打ち)
実は全体の数%は、リスクとは無関係に「無作為」で検査されるよう設定されています。これは税関のモニタリング精度を高めるための制度的な仕組みです。
⑤ 税関の地域事情や情報提供
特定の港・空港で発生した過去のトラブルや、「密輸情報」「偽装申告」などの通報があると、同様の貨物にも影響が出るケースがあります。
■ よくある「検査されやすい」貨物の特徴
- 「雑貨」や「アパレル」など大まかな品名で申告
- 複数の種類を混載(Mixed Cargo)している
- 初めて取引する国・サプライヤーからの輸入
- 原産国が中国、インド、ベトナムなど税関リスクが高めとされる国
- 箱に記載の内容とインボイスが微妙に異なる
■ 検査によるコストと対応
現物検査が行われた場合、以下のコストが発生する可能性があります:
- 検査立ち会い費用(通関業者による代行含む)
- 荷役費用(コンテナ開梱・再梱包など)
- 保管費用(長時間税関保留によるヤード滞留)
- 配送遅延による追加費用(陸送再手配等)
これらは予期しないコストになりやすいため、「検査リスク」を見込んだ予算や納期設定が重要です。
■ 検査を避ける方法はあるの?
完全に避けることはできませんが、以下の対応で「検査リスクを低減」することは可能です:
✅ インボイス・パッキングリストを正確かつ詳細に
✅ HSコードの付番に誤りがないか、プロにチェックしてもらう
✅ 規制品目は事前に届出・許可取得(例:食品届出、PSE、PSCなど)
✅ サプライヤーに「外装記載」や梱包内容の透明性を依頼
✅ 通関業者と事前に「検査リスクが高い貨物」の共有をしておく
■ まとめ:「なぜうちだけ?」にはちゃんと理由がある
税関の検査指定には、表には出ないロジックと安全・公平を守るための配慮があります。「運が悪かった」で終わらせず、「次からどうすれば検査を減らせるか?」という視点で仕組みを理解することが、安定した輸入ビジネスの鍵になります。
「検査されても慌てない」体制づくりと、「検査されにくい」輸入書類の工夫をセットで進めていきましょう!