~「たかが数字」と思っていたら大問題に!~
国際貿易において、商品ごとに設定されるHSコード(Harmonized System Code)は、関税率、通関処理、規制品目の判断などに直接関わる非常に重要なコードです。
しかし「似たような商品だから…」「とりあえず過去と同じコードで…」といった軽い判断で誤ったコードを記載してしまうと、思わぬトラブルにつながることも。
今回は、HSコードの付け間違いによって実際に起こりうる(または起こった)トラブルの事例をご紹介し、正確なHSコード付けの重要性を解説します。
そもそもHSコードとは?
HSコードは、国際的に統一された品目分類番号で、6桁を基本とし、各国がさらに細分化(通常は9桁〜10桁)して使用しています。
このコードにより:
- 輸出入時の関税が決まる
- 禁制品・規制品目の判定がされる
- 通関書類の整合性が確認される
といった流れになっており、まさに「国際取引のルールブック」の役割を果たします。
トラブル事例①:関税過徴・過少納付による追徴&罰金
ある企業が家具部品を輸出する際、誤って「完成品の家具」のHSコードを申告。結果として、実際より高い関税がかかり、海外バイヤーがキャンセル。
逆に、実際よりも低関税のコードで申告していたことが後から発覚し、税関からの追徴課税と過少申告加算税を受けた事例もあります。
- 本来の関税:5% → 間違ったコードで2% → 差額+延滞税
- 信用失墜により、バイヤーとの関係悪化
トラブル事例②:禁制品扱いになり輸出ストップ
ある企業がリチウム電池を含む製品を輸出する際、電池を含む製品として申告せず、一般電子部品としてHSコードを記載。通関で発覚し、危険物扱いとなるべき貨物が誤って処理されていたため、税関で差し止め。
- 最終的に輸出許可取り消し
- 顧客納期に間に合わずキャンセル
- 輸送会社からブラックリスト扱いにされる
トラブル事例③:FTA(自由貿易協定)適用除外
ある食品メーカーが、ASEAN諸国向けに輸出した際、原産地証明書のHSコードとインボイス記載のHSコードに相違があり、FTAの関税特恵が適用されず、現地で高額な関税を徴収されることに。
- 顧客からクレーム&損害賠償請求
- 原産地証明の信用喪失 → 次回以降のFTA利用不可
トラブル事例④:海外での輸入拒否・税関保留
特に米国やEUなどでは、製品の安全規制・輸入制限がHSコードベースで管理されており、間違ったコードで申告すると以下のような事態に:
- 審査に時間がかかり、保留・通関遅延
- 規制品扱いとなり、輸入不許可
- 再輸送や廃棄のコスト発生
トラブルを防ぐための対策
- ✅ 税関・JETROなどの公式データベースでコード確認
- ✅ 商品仕様書・原材料・使用目的をしっかり分析
- ✅ 必要に応じて「事前教示制度」を活用(日本税関の制度)
- ✅ 社内でHSコードの付番基準を明文化
- ✅ 定期的なコード見直しとアップデート
まとめ
「たかが数字」と軽視されがちなHSコードですが、実は国際取引の成否を分ける「キーナンバー」です。誤ったコードは、関税だけでなく信用や納期にも大きな影響を与えるため、正確な把握と記載が不可欠です。
トラブルを未然に防ぐためにも、社内での知識共有やプロによる監修など、体制づくりを進めていきましょう。