越境ECが拡大する中で、忘れてはならないのが各国における「税金」への対応です。売上が伸びたのに、税務対応を怠ったせいで高額なペナルティを課される事例も増えており、事業者にとっては死活問題。
本記事では、国際取引に関わる主要な間接税、すなわち「VAT(付加価値税)」「GST(物品サービス税)」「Sales Tax(売上税)」の違いと、越境ECにおける具体的な対応策を解説します。
🌍 各国の税制:3つの間接税の基礎知識
✅ 1. VAT(Value Added Tax / 付加価値税)
- 対象国:欧州連合(EU)諸国、イギリス、ノルウェーなど多数
- 特徴:売上の段階ごとに課税され、最終消費者が実質的に負担
- 税率例:EU圏では 20〜25%程度が一般的
- 登録義務:一定の売上を超えると事業者は現地でVAT番号取得が必要
✅ 2. GST(Goods and Services Tax / 物品サービス税)
- 対象国:オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、シンガポールなど
- 特徴:VATに似た仕組みで、多くの国で「デジタルサービス」も課税対象
- 税率例:オーストラリア10%、ニュージーランド15%など
- 注目点:越境デジタルコンテンツも対象になるケースあり(電子書籍、音楽等)
✅ 3. Sales Tax(売上税)
- 対象国:主にアメリカ(州単位で課税制度が異なる)
- 特徴:小売段階のみ課税され、仕入や中間取引には課税されない
- 税率例:州・郡・市の合算で5〜10%以上になることも
- 登録義務:「ネクサス(経済的つながり)」が発生すると納税義務が生じる
🔍 具体的な違いまとめ(比較表)
項目 | VAT | GST | Sales Tax |
---|---|---|---|
主な地域 | EU、英国など | オーストラリア、NZ等 | アメリカ(州ごと) |
課税段階 | 全段階 | 全段階 | 小売のみ |
表示方法 | 含めて価格表示 | 含めて価格表示 | 外税表示が主流 |
登録条件 | 国ごとの売上閾値 | 国ごとの売上閾値 | ネクサス基準(州ごと) |
顧客への影響 | 商品価格が上がる | 商品価格が上がる | 購入時に加算される |
🛒 越境ECで注意すべきポイント
1. 販売先ごとに異なる税務ルールを理解する
- 例えばEUでは2021年から「One-Stop Shop(OSS)制度」が導入され、複数国向け販売でも1か国でまとめて申告が可能に。
- アメリカでは州ごとにSales Taxが異なり、Amazon FBAなどを使っている場合「経済ネクサス」が発生している可能性も。
2. プラットフォームによる代理徴収の有無
- Amazon、eBay、Etsyなど一部のECプラットフォームは、自動でVATやSales Taxを徴収・納付してくれる仕組みを導入済。
- Shopifyや独自サイトでは事業者が自分で対応する必要があることが多い。
3. インボイス・明細書の正確な記載
- 税率、課税対象、VAT/GST番号など、適切に記載されていないと通関時にトラブルに。
- 特にB2B取引では「リバースチャージ(Reverse Charge)」の適用も重要。
📌 対応方法とおすすめツール
✅ 対応策:
- 売上が多い国には早めに登録・申請しておく(VAT番号など)
- ネクサスが発生する州の調査 → Sales Tax登録と徴収義務の確認
- 税込み価格設定(特にヨーロッパ圏)を意識
- 税務アドバイザーと相談し、適切な記帳・報告体制を構築
✅ おすすめの支援ツール/サービス:
サービス名 | 機能概要 |
---|---|
TaxJar | 米国Sales Tax自動計算&申告対応 |
Avalara | VAT・GST・Sales Tax全対応の総合ツール |
SimplyVAT | EU向けVAT登録・申告代行 |
Xero / QuickBooks | 会計・インボイス管理 |
✒️ まとめ
越境ECにおいて、税金対応は「後回しにできない経営リスク」です。
特に、販売国が増えるにつれて「どの税金を、どこに、どう申告すべきか?」という点が複雑化します。
だからこそ、早期の理解と外部ツール・専門家の活用が重要になります。
越境ビジネスをスケーラブルに展開するためには、“売る” だけでなく “守る”体制も整えることが成功のカギです。