―越境ビジネスが知っておきたい「有害化学物質表示義務」のリアル―
越境ECや米国向け輸出を行っている事業者にとって、無視できない「州独自の規制」。その代表格が、カリフォルニア州の「プロポジション65(Prop 65)」です。
「なんとなく聞いたことあるけど…」「それって義務?罰則あるの?」
今回は、プロポジション65の基本と、ビジネスに与える影響、実務的な対策方法をわかりやすく解説します。
■ プロポジション65(正式名称:Safe Drinking Water and Toxic Enforcement Act of 1986)とは?
1986年にカリフォルニア州で制定された州法で、州が定める有害化学物質(発がん性・生殖毒性)に関する以下2つの義務があります:
- 指定物質を含む商品には「警告表示(Warning)」が必要
- 飲料水や大気などへの指定物質の排出を制限
この法律のユニークな点は、連邦法よりも厳しい州独自の基準であること。そして、対象となる有害物質リストは年々拡大され、現在では900種類以上が掲載されています。
■ よくある該当商品とリスク
意外かもしれませんが、以下のような商品が対象になるケースが多いです:
- アパレル(染料やプリントに含まれる鉛・フタル酸エステルなど)
- アクセサリー(ニッケルや鉛)
- プラスチック製品(可塑剤、BPAなど)
- 電子機器(はんだ、バッテリー、PVCケーブル)
- 食器・調理器具(セラミックの釉薬、ステンレスの重金属成分)
📦 越境ECでよくあるトラブル:「日本国内で安全基準を満たしている商品でも、Prop 65の表示義務を果たしていないと販売停止や訴訟リスクが生じる」
■ 「警告表示」ってどんなもの?
以下のような表示が必要になります:
WARNING: This product contains chemicals known to the State of California to cause cancer and birth defects or other reproductive harm.
この文言は商品ラベル、商品ページ、包装、あるいはECサイトの購入前に確認できる箇所に明示される必要があります。
💡 補足:2018年以降、表示要件がより厳格化され「特定の化学物質名の記載」が求められるようになっています。
■ なぜビジネスにとって深刻なの?
- カリフォルニア州で販売されるだけで規制対象になる(=越境ECも含まれる)
- 州外企業も訴訟の対象になる
- 弁護士・NGOが警告違反を見つけて訴訟 → 和解金+表示義務対応コストが発生
- 連邦法との整合性がないため、知らずに違反してしまうケースも多い
実際、Amazonでも「Prop 65の表示がない商品」が理由で販売停止になった事例が報告されています。
■ 越境事業者がとるべき対策は?
① 成分確認を徹底
自社商品またはOEM製品の素材成分を洗い出し、Prop 65にリストされている物質を含んでいないかチェックします。
② 必要なら表示を追加
リスクがある場合は、商品に警告ラベルを追加し、ECサイト上でも明示。透明性ある姿勢は、信頼につながります。
③ カリフォルニア州への販売を制限する(やむを得ない場合)
特定商品について、カリフォルニア州のみ販売を制限するという対応も検討できます。
④ ラボテスト&コンサルを活用
専門機関での材料分析や、貿易専門の法務コンサルタントの活用もおすすめです。
■ まとめ:Prop 65は“敵”ではなく“味方”にできる
たしかに、表示義務や成分チェックは手間がかかるように感じるかもしれません。
しかし、これは“安全・安心”を重視するカリフォルニア市場と信頼関係を築くチャンスでもあります。
しっかり準備すれば、越境ビジネスの障壁ではなく「ブランド価値を高める武器」にもなるのです。
🌎 アメリカ市場は、ルールを知る者に優しい。
ぜひ今こそ、Prop 65への理解と対策を整えて、カリフォルニアの扉を安心してノックしましょう!